ポケットメディカ健康相談
ハ行
本書に掲載している薬用語,副作用のうち,聞き慣れないものを中心に解説しています。【初】=初発症状(初期に現れる症状)を示します。
■ハ行
●パーキンソン症状
ぱーきんそんしょうじょう
動作緩慢,発語不明瞭,筋固縮(こしゅく),歩行障害などパーキンソン病と類縁疾患に共通してみられる症状。パーキンソン症状を示す疾患には,パーキンソン病を含む神経変性疾患のほか,多発脳梗塞,脳炎,一酸化炭素中毒,薬物の副作用などがある。
【初】顔のひきつれ,手足や表情のこわばり,手のふるえ,背をまるめる,動きが悪い,単調な話し声
●肺炎
はいえん
肺胞および肺の間質(結合組織)に生ずる炎症。種々の微生物感染,化学物質や物理的刺激,免疫学的要因など,さまざまな原因がある。発熱,倦怠感,食欲不振などの全身症状と,せき,たん,胸痛,呼吸困難などの呼吸器症状がみられる。
【初】発熱,せき・たんが出る,胸苦しい感じ,胸が痛む
●敗血症
はいけつしょう
何らかの感染症をおこしている体内の化膿巣から大量の細菌が血液中に流入して,全身の諸臓器に転移性の感染病巣を形成するもので,細菌感染症のなかで最も重篤な病態。
【初】寒気やふるえを伴う高熱,熱を下げてもすぐ上がる,全身がだるい,無気力になる
●肺水腫
はいすいしゅ
肺水腫とは,血液の液体成分が肺毛細血管の外へ滲みだした状態をいう。肺内で液体成分がたまるため肺のガス交換が障害されて☆低酸素血症★▼前出▼となり,呼吸困難が現れる。
【初】息苦しい,ピンク色の泡のようなたん,唇が蒼白,顔色が悪い,不安感
●肺線維症
はいせんいしょう
広範囲に肺胞壁が線維化したり,線維性結合組織が増殖している病的状態を指す。動作時の呼吸困難や空せきを示す。すべての☆間質性肺炎★▼前出▼は本症の原因となる。
【初】息苦しい,空せき,バチ状指,チアノーゼ(皮膚,唇,指先,爪などが青紫色になる)
●排尿障害
はいにょうしょうがい
尿量の異常,排尿回数の異常,排尿状態の異常(排尿困難,尿失禁,尿閉),尿線の異常(尿線の細小,中絶)などがある。
【初】いつも尿意を感じる,尿の出が悪くなる,尿が出しきれない
●白質脳症
はくしつのうしょう
大脳深部,白質(大脳髄質)に病変がおこる病態の総称。感染,神経線維をおおっている髄鞘(ずいしょう)が障害される脱髄(だつずい)疾患,薬剤中毒などで引きおこされることがある。片麻痺,感覚異常,視野欠損,失語,運動麻痺,認知症などをおこす。
【初】忘れやすくなる,ふらつき歩行,口のもつれ,めまい・ふらつき感
●剥脱性皮膚炎(=紅皮症)
はくだつせいひふえん(=こうひしょう)
ほぼ全身の皮膚が潮紅し,皮膚表面の角質がはがれ落ちる落屑(らくせつ)を伴う皮膚病。皮膚炎に続発するもの,乾癬(かんせん)など各種皮膚病が全身に広がって紅皮症になるもの,薬疹(やくしん)に続発するものなどがある。
【初】発熱,全身(特に顔)の発疹と落屑(皮膚がぼろぼろと落ちる),悪寒,全身のだるさ
●播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(=DIC)
はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん(=でぃーあいしー)
急性白血病・がん,☆敗血症★▼前出▼,重症感染症,☆劇症肝炎★▼前出▼,胎盤早期剥離(はくり)などの重症の基礎疾患の悪化に伴い,血管内で血液凝固系が活性化され,全身的に血管内で血液が凝固し,細小血管に多数の微小血栓を生じる病態。一方,さまざまな血液凝固因子が消費されて,強い☆出血傾向★▼前出▼が現れる。主要な臓器は循環障害に陥り,進行すると多臓器不全の致死的な状態に至る。
【初】出血しやすくなる,紫斑ができる,下血,尿の出が少なくなる
●白血球減少(症)
はっけっきゅうげんしょう(しょう)
白血球は,体内に進入した細菌や異物を取り込み,消化分解して体を守っている。したがって,白血球が減少すると重症感染症にかかる危険が高まる。白血球には,顆粒球(かりゅうきゅう)(好中球,好酸球,好塩基球),単球,リンパ球の5種類があり,比率では好中球とリンパ球で大部分を占めるため,白血球減少症の多くは☆好中球減少症★▼前出▼またはリンパ球の減少による。
【初】原因不明の発熱・悪寒・のどの痛み,手足の紫斑(あざ)や点状出血,全身脱力感,歯や鼻の出血,口内炎
●汎血球減少症
はんけっきゅうげんしょうしょう
血液の固形成分である血球には,赤血球,白血球,血小板があり,3系統とも減少した状態をいう。骨髄での血球産生低下や,体内での血球破壊の亢進が原因となる。
【初】原因不明の発熱・悪寒・のどの痛み,手足の紫斑(あざ)や点状出血,全身脱力感,歯や鼻の出血,口内炎
●PIE症候群(好酸球性肺浸潤)
ぴーあいいーしょうこうぐん(こうさんきゅうせいはいしんじゅん)
白血球の顆粒球(かりゅうきゅう)のうち,好酸球が肺に浸潤する肺炎。☆好酸球増多★▼前出▼を伴わないこともある。アレルギーが関与していると考えられる一方,原因不明なことが少なくない。
【初】発熱,せき,たん,息切れ,呼吸困難,全身のだるさ
●PC(プレグナンシー・カテゴリー)
ぴーしー(ぷれぐなんしー・かてごりー)
日本には,妊娠時服薬の公的な危険度分類はないが,米国FDA(食品医薬品局)ではプレグナンシー・カテゴリー(妊娠時の使用にあたっての薬剤分類)を導入していた。リスクの証明がないAから危険性の高いDまでと,服薬禁止とされるXの5段階。
●皮膚粘膜眼症候群(=スティブンス-ジョンソン症候群)
ひふねんまくがんしょうこうぐん(=すてぃぶんす-じょんそんしょうこうぐん)
高熱とともに,全身の広い範囲の皮膚に紅斑様の発疹が現れ,水疱・びらんを伴う。眼,口,外陰部などの粘膜も強く障害を受ける。原因はウイルスや細菌感染以外に,薬剤アレルギーの重症型である場合が多い。皮膚のびらんが体表面積の10%未満であれば本症,10%を超えると☆中毒性表皮壊死(えし)融解症★(=ライエル症候群=TEN)▼前出▼と呼ばれる。
【初】発熱,頭痛,関節痛,粘膜のあれ・水疱,皮膚をこするとはげたり水疱ができる
●ピリン系
ぴりんけい
解熱鎮痛作用をもつアンチピリン,スルピリン,イソプロピルアンチピリンなどのピラゾロン系薬は,別名ピリン系と呼ばれる。ピリン疹などのアレルギー反応が特徴的。なお,アスピリンという商標名はピリンと付いてもピリン系ではない。
●ファンコニー症候群
ふぁんこにーしょうこうぐん
腎臓の尿細管(にょうさいかん)機能異常により,アミノ酸,糖,リン酸,重炭酸など尿細管で再吸収されるべき物質が尿中に漏出する病態の総称。蛋白尿,低リン血症,☆低カリウム血症★▼前出▼などが引きおこされ,くる病や骨軟化症などの骨病変が進行する。
【初】蛋白尿,骨痛,骨変形
●舞踏病アテトーゼ
ぶとうびょうあてとーぜ
アテトーゼは不規則な,ゆっくりとした絶え間ない動きの不随意運動で,素早い動きの舞踏病運動と併存していることが多い。強い筋肉の緊張を伴う場合には指の過進展,手首関節での過屈曲などの異常肢位をとる。
●プロトンポンプ阻害薬
ぷろとんぽんぷそがいやく
胃粘膜壁細胞内から胃腔内に向けて酸を送りだす際に働く酵素の活性を阻害し,胃酸分泌を強力に抑制する。胃・十二指腸潰瘍などの治療薬として用いる。
●分子標的治療薬
ぶんしひょうてきちりょうやく
病気の原因,成り立ちや進展を臓器,組織,細胞レベルで解析した上で,そこに関わる特定の分子をターゲットとする薬剤が開発されている。標的とされる分子には,がん遺伝子,細胞分裂周期関連因子,増殖シグナル関連因子,血管新生関連因子などがある。
●閉塞隅角緑内障
へいそくぐうかくりょくないしょう
眼のなかには血液の代わりとなって栄養などを運ぶ房水が流れていて,その量が眼圧を決めている。☆緑内障★▼後出▼を発症メカニズムから分けると,閉塞隅角(ぐうかく)緑内障と開放隅角緑内障の2つのタイプがある。閉塞隅角緑内障は房水の出口にあたる隅角がふさがれることにより,房水がたまり眼圧が高くなって発症する。
【初】明かりに虹がかかる,目がかすんだりにじんだりする,まぶしい,頭痛,目が痛む
●閉塞性細気管支炎
へいそくせいさいきかんしえん
肺に入った気管支は次々に細く枝分かれし,細気管支となる。細気管支領域で炎症がおき,内腔の狭窄(きょうさく)や閉塞をおこした病態。気道の閉塞によって著しい閉塞性肺機能障害と強い呼吸困難を呈する。
【初】呼吸困難,せき・たんが出る,呼吸がヒューヒューする
●ベーター・ブロッカー
べーたー・ぶろっかー
☆アドレナリン★▼前出▼や☆ノルアドレナリン★▼前出▼と結合する細胞膜表面の受容体(細胞が特定の化学物質と結合するための構造)はαとβに分類されており,ベーター・ブロッカーはβ受容体と結合するのを遮断してその作用を抑制する薬。狭心症,不整脈,高血圧など循環器疾患に広く利用される。
●ベル麻痺
べるまひ
顔面神経麻痺による顔面筋の運動麻痺のうち,原因疾患が明らかでないものをいう。考えられる原因としては,アレルギー,顔面神経の炎症・浮腫,ウイルス感染などがある。
【初】眼を閉じられない,口角が垂れ下がる,口笛が吹けなくなる
●膀胱炎(様症状)
ぼうこうえん(ようしょうじょう)
膀胱炎は細菌性と非細菌性に分けられるが,大部分は尿道から侵入した細菌の感染が原因でおこる。排尿痛,頻尿,尿混濁が3主要症状として現れる。
【初】尿量の増加,排尿後すぐに行きたくなる,排尿時の痛み,残尿感
●房室ブロック(=AVブロック)
ぼうしつぶろっく(=えーぶいぶろっく)
心臓内部で電気的刺激の伝導が遅延したり途絶することを伝導ブロックという。心房→心室間の伝導ブロックを房室ブロックといい,重症度によって徐脈(じょみゃく)(心拍数が減少)が現れ,脈拍数を増やす治療が必要になる。
【初】動悸,胸部の痛み・不快感,めまい,脈が跳ぶ,失神
●ポルフィリン症
ぽるふぃりんしょう
酸素運搬を担うヘモグロビンを構成するヘム(鉄とポルフィリンの化合物)という物質の合成過程におけるポルフィリン代謝に異常がある一群の疾患。①急性型ポルフィリン症(急性腹症(ふくしょう),神経症状,精神症状などの急性発作をおこす),②皮膚型ポルフィリン症(光線過敏性皮膚炎などをおこす)に大別される。
【初】腹痛,日光の当たるところが赤くなったり,ブツブツができたりする,瘢痕(はんこん)や色素沈着