漢方薬
薬剤番号:漢001〜漢155
■漢方薬で解説する薬について
漢方薬が保険で用いられるようになり,一種の漢方薬ブームになったのはずいぶん前のことですが,現在では治療薬の一部門として認識され,活用されることが多くなりました。医師に漢方薬の治療を希望する患者さんも珍しくなく,漢方薬が処方される例は確実に増えています。
科学的に証明することが難しい点はありますが,医療を受ける側にすれば選択の幅が広がることは結構なことです。古くから使われてきたという安心感があるのも事実です。しかし,漢方薬だから副作用はないときめつけないで,自分の服用している薬の名前をきちんと調べるようにしてください。
たしかに漢方薬には,ある種の医薬品のように強い副作用があるものは少ないのですが,副作用が全くないわけではありません。甘草(かんぞう),附子(ぶし),大黄(だいおう)などを含有している場合には,一緒に服用する薬の種類や,服用しておこる反応に十分な注意をはらわなければなりません。甘草配合製剤に関するコラム甘草配合製剤服用に関する大切な注意もぜひお読みください。
東洋医学の体系は,深遠で合理的なものですが,病気を治すのに薬だけにたよっていては決してよくなりません。栄養,食事,運動,精神のもち方など,自然環境も含めてすべてのものが病気に影響を与えると考えられています。
漢方薬の用い方は病名だけで薬をきめるのではなく,その人の体格・体力・病気の進行度合など,数多くの情報が必要ですので,処方医と十分に対話するよう心がけてください。最近は高齢者の精神活動に期待できるとして繁用される処方もあります。
■薬剤師の眼
効能だけでなく「証」が合っていることが大切
1967年に4つの漢方エキス製剤が保険薬価に収載されて以来,現在では140種類以上の漢方処方が保険医療で使用できるようになっています。一方,医学教育で正式に漢方医学がカリキュラムに組み入れられたのは2001年以降のことです。現在ではすべての医学部で漢方医学教育が行われるようになっていますが,指導者不足から大学間でのレベルにはかなりの開きがあるようです。
もちろん,基礎からしっかり漢方を学んだ医師も大勢いますが,残念ながら,効能にある病名だけで処方しているとしか思えない例にもしばしば遭遇します。
漢方薬は現代医学とは異なる方法で患者さんの「証」を診断し,処方を決定します。「証」は患者さんの体質の虚実(きょじつ)・陰陽(いんよう)・脈……などから導き出されます。この西洋医学とは異なる診断法を用いるにもかかわらず,国の承認する薬としては西洋医学的な効能に無理やり当てはめているため,効能にある病名を診断されたとしても,処方された漢方薬の「証」が合っていない場合もしばしばおこります。
漢方薬にもさまざまな副作用があり,時には重大な副作用があることが指摘されてきていますが,「証」に合わない処方が出されたためにおこっている副作用も多いのではないかと考えられます。