内04:血圧の薬
薬剤番号:内04-01-01~内04-04-02
■血圧に関連する薬を説明します
◆高血圧の薬(利尿降圧薬,ベーター・ブロッカー,カルシウム拮抗(きっこう)薬,交感神経アルファ遮断(しゃだん)薬,ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬,ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)など)
◆低血圧の薬。低血圧症は,薬物治療はあまり行われませんし,薬の種類も多くありません。
■副作用・相互作用に注意すべき薬
血圧の治療で大切なことは,すぐに薬剤に頼るのではなく,体重のコントロール,食事の注意(減塩など),アルコールの制限,禁煙,運動など生活習慣を適正にすることです。
血圧の薬は一度のみ始めると一生涯のみ続けなければならないという伝説のようなものが流布していて,そのため血圧の薬物療法を始めることをためらっている人がいます。しかし,生活習慣を変えて血圧が正常になれば,薬剤をやめても大丈夫ですので,必要な場合にはきちんと薬を服用しましょう。
◆利尿降圧薬
古くから使われている降圧薬ですが,その有用性は確立しています。合併症を伴わない高血圧に対しては,ベーター・ブロッカーとともに第一選択薬です。チアジド系,ループ利尿薬,カリウム保持性利尿薬の三つに分類されます。
チアジド系の注意すべき副作用は,血液障害です。そのほか光線過敏症や糖尿病,痛風が発生することがあります。ループ利尿薬の場合も血液の検査はきちんと受けてください。夕食以降に服用すると夜中に何度もトイレにおきなければならなくなって,かえって血圧に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。
チアジド系もループ系も,糖尿病用薬剤と併用すると,血糖を降下させる効果が著しく低下するので,併用には注意しなければなりません。
◆ACE 阻害薬,ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
レニン—アンジオテンシン系に作用する薬剤であり,ACE阻害薬は昇圧物質であるアンジオテンシンⅡの生成を抑え,ARBはアンジオテンシンⅡの受容体を遮断することにより血圧を下げる効果を発揮します。また,両剤ともにレニン—アンジオテンシン系に作用することから心臓・腎臓の保護作用が認められているので,タンパク尿を伴う糖尿病や心不全・腎不全を合併している高血圧には第一選択薬として使用されています。
重大な副作用として,血管浮腫や無顆粒球症などの報告があります。また,重大な副作用ではありませんが,比較的おきやすいものとしてACE阻害薬には空(から)ぜきがあります。ACE阻害薬を服用していて,せきがなかなか止まらないときには,副作用ではないかと疑ってみてください。
ARBは作用機序の違いにより,空せきの頻度がACE阻害薬と比べてかなり低くなっているため,最近ではACE阻害薬にかわりARBがよく使用されています。
■薬剤師の眼
降圧薬はどの薬剤が第一選択薬となるか
降圧薬は,カルシウム拮抗薬,ACE阻害薬,ARB,α(アルファ)遮断薬,β(ベーター)遮断薬,利尿薬と多数の薬剤が発売されています。それぞれに長所,短所(副作用)があり,年齢,合併症の有無,他薬の服用の有無などに応じて使い分けられ処方されます。
カルシウム拮抗薬は,他の系統の薬剤と比べ降圧効果が高く,また安価であり,高齢者や合併症がある場合でも,比較的安全に使用されています。血管拡張作用により,脳血管障害や狭心症を合併する高血圧に対しては,特に優先的に使用されます。副作用としては頭痛や顔のほてり,動悸などがおこることがあります。グレープフルーツジュースはカルシウム拮抗薬の効果を高めてしまうため,服用には注意してください。
ACE阻害薬とARBは,多くのエビデンスにより心疾患,腎疾患,脳血管障害,糖尿病などを合併する高血圧には推奨されている薬剤です。近年,ARBはACE阻害薬の副作用である空ぜきが少ないことから,ACE阻害薬にかわりよく使用されるようになりました。
α遮断薬は,高脂血症や前立腺肥大を合併する高血圧には適していますが,起立性低血圧の副作用があるため,特に高齢者のふらつきには注意が必要となります。
β遮断薬は,心不全,頻脈,狭心症を合併する高血圧や心筋梗塞後には適していますが,徐脈やぜんそくの悪化といった副作用があります。
利尿薬は,高齢者や心不全を呈する患者さんに古くから多用されています。特に他剤で降圧効果が不十分の場合には,少量の利尿薬(チアジド系)が併用されます。血中のナトリウムやカリウムの低下,尿酸の上昇などには注意が必要です。
このように,カルシウム拮抗薬とARB(またはACE阻害薬)は降圧効果に加え,様々な合併症にも効果があり,高齢者にも比較的安全に使用できるため,第一選択薬としてよく処方されます。