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ポケットメディカ 処方薬事典
概要

内16:がんに使われる内服薬
薬剤番号:内16-01-01~内16-08-13

■各種の抗がん薬と,がん治療に使われるその他の薬剤を説明します

◆免疫力を増強させる薬
◆がん細胞のDNAを破壊したり複製を阻止するアルキル化剤
◆がん細胞の分裂増殖に必要な生合成の過程を阻害する代謝拮抗薬
◆動植物から抽出した成分に基づく薬や,抗がん作用のあるホルモン剤など
◆がん増殖に必要な酵素を選択的に阻害するなどの作用を持つ分子標的治療薬
◆抗がん薬の副作用を軽減する薬や,がん特有の痛みを和らげる薬など

■副作用・相互作用に注意すべき薬

 現時点の抗がん薬においては,副作用はある程度は受忍すべきものとして使用される場合がほとんどです。
 アルキル化剤,代謝拮抗薬では無顆粒球症,白血球減少など骨髄機能の状況や,肝臓・腎臓機能の検査値,消化器症状などを確認しながら,服薬の継続あるいは休薬や減量のタイミングを考慮します。副作用が比較的軽いホルモン療法薬でも,乳がんに用いる抗エストロゲン薬では血栓塞栓症のリスクが上がりますし,前立腺がんに用いる抗男性ホルモン薬での女性化乳房などはやむを得ないものです。どこまで受忍するか,主治医とのコミュニケーションがとても大切です。
 抗がん薬での相互作用は,1993年におきたヘルペス治療薬ソリブジンとフルオロウラシルのケースのように,死亡を含む重大なケースに発展する場合があります。もともと細胞毒性が強い成分が多く使用されているので,その代謝に影響を及ぼす薬剤は慎重に併用する必要があります。
 フルオロウラシル系の抗がん薬で治療中に,治療法(使用する薬剤)を変更する場合があります。その際には,休薬期間(たとえばどちらの薬剤も7日間服用しないなど)が必要となります。薬剤が変更になったので翌日から連続して服用したために,重篤な副作用が現れた例も報告されています。

■薬剤師の眼
負担の少ない「がん休眠療法」はなぜ普及しないのか
 日本でも一部の医師が実践している「がん休眠療法(休火山療法)」というものがあります。1990年代に当時の金沢大学助教授の高橋豊医師が提唱した「がんの増殖,発育を抑制して,がんと長く共存する」抗がん薬治療法です。
 いわゆる標準療法では,「がん細胞をできる限り叩き,小さくする」ことが評価の対象でした。つまり抗がん薬として認められるためには,使用量は患者さんが耐えられるギリギリの量が設定され,その結果,がんは縮小したが副作用により治療が継続できなくなるケースが多々ありました。
 がん休眠療法は,副作用が出ない程度の少ない抗がん薬で「少しでも長く,がんが大きくならない」ことを目標に,つまり,がんと少しでも長く共存することを目標とします。がんは縮小するが副作用発現の可能性が高い治療法と,がんは縮小しないが増大を抑える最小限の抗がん薬で穏やかな日々を1日でも長く保つ治療法。患者の立場なら多くの人が後者を選ぶのではないでしょうか。
 患者さんの身体的負担が少なく,薬剤使用量も少ないので健康保険財政の負担も少ないこの治療法がどうして普及しないのか,不思議でなりません。

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