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ポケットメディカ 処方薬事典
概要

内14:抗生物質
薬剤番号:内14-01-01~内14-06-05

■感染症治療に用いる薬のうち,抗生物質について説明します

◆抗生物質とは,微生物によってつくられる化学物質で,他の微生物の発育や増殖を抑えます。
◆皮膚感染症,外傷・熱傷,咽頭・扁桃炎,気管支炎,肺炎,外耳・中耳炎,副鼻腔炎,膀胱炎など,細菌や真菌による感染症の治療に用いる薬。
◆化学構造によりペニシリン系,マクロライド系などに分類され,その系統ごとに特徴があります。

■副作用・相互作用に注意すべき薬

◆抗生物質全般
 抗生物質を服用するとき,まず注意すべきはアレルギーです。いかに効き目がすばらしくても,ひどい薬疹が出たり呼吸困難をおこすようではのむことができません。不幸にしてそのような体質の場合には,あなたが何の薬でアレルギーを経験したのかがとても大切です。ケガをしたり肺炎になったりした場合には,細菌をやっつけてくれる抗生物質(または次章の抗菌製剤)のお世話にならざるをえません。そのようなとき,「この抗生物質は過去に使ったけれどアレルギーはおこらなかった」と自信を持っていえる薬剤を覚えておいてください。
 副作用として次にこわいのは,血液障害です。特に細菌をやっつけてくれる白血球の数が少なくなるのは困ります。かぜなどの炎症があるとふつう,白血球の数は増加します。からだの防衛反応として侵入してきた細菌などに対応するために,からだのほうで白血球の動員を命令するからです。のんだ薬がそれとは反対の行動をとるわけですから,困ったものです。白血球減少など血液障害のはじめには,原因のはっきりしない発熱,のどの痛み,皮膚や粘膜からの出血,ひどい倦怠感が現れます。そうした症状を感じたら,すぐに処方医に知らせてください。
 発熱やのどの痛みと同様に,もとの疾患の症状なのか副作用によるものなのかがはっきりしないものに,間質性肺炎やPIE症候群(好酸球肺浸潤症候群)があります。初期症状として発熱やせき,呼吸困難などが出てきますので,かぜの症状の悪化とまちがえてしまう危険性があります。
 また,血液障害と同じようにひどい疲れを感じる副作用に肝機能障害があります。血液障害,肝機能障害のいずれもが血液検査でわかりますので,処方医に連絡して必ず検査を受けるようにしてください。
 もう一つ重大な副作用は,下痢です。抗生物質を連用するとからだにとって害になる細菌だけでなく,必要な細菌までも殺してしまいます。そのため腸内細菌のバランスがくずれて下痢がおこります。こうした単純な下痢だけならまだよいのですが,腹痛や血便を伴い回数も多い偽膜性大腸炎と呼ばれる下痢には注意が必要です。抗生物質は,処方された分だけはきちんと服用するようにと指示されることが多いのですが,下痢がおこったらすぐに処方医に連絡をとったほうがよいでしょう。

■薬剤師の眼
かぜをひいたときに抗生物質は本当に必要か
 かぜは,80〜90%がウイルス感染によっておこります。抗生物質(抗菌薬も含む,以下同)は細菌には効きますが,ウイルスには効きません。なぜ,かぜのときに抗生物質が処方されるかというと,ウイルスが原因なのか,それとも細菌が原因なのかを判別することが困難であるためです。早期に抗生物質を服用し重症化を防ぐことと,高齢者や乳幼児など免疫力が低下している患者では,ウイルスが原因であるかぜであっても細菌による二次感染を引き起こし,肺炎,腎盂腎炎,髄膜炎,扁桃腺炎,中耳炎などが重症化する,いわゆる「かぜをこじらせる」ことを防ぐためです。
 しかし,最近ではウイルスが原因であるかぜに対する抗生物質の投与によって,二次感染を防ぎ,重症化を防ぐことができる可能性は非常に低いことがわかりました。また,抗生物質が頻繁に使用されることで,抗生物質が効かない薬剤耐性(AMR)をもつ細菌が増える問題も出てきました。耐性菌が増えると細菌による感染症が重症化しやすく,治療が難しくなります。
 そこで厚生労働省は薬剤耐性(AMR)対策として「抗微生物薬適正使用の手引き」を作成し,抗生物質の適正な使用を啓発しています。この手引きでは,ほとんどウイルスが原因である急性のかぜ症候群では抗生物質の投与は必要ないとされ,症状が重いときや症状が重症化してから,抗生物質を服用することを勧めています。
 すべての抗生物質・抗菌薬の添付文書において,ほとんどウイルスが原因である咽頭炎・喉頭炎・扁桃炎・急性気管支炎・感染性腸炎・中耳炎・副鼻腔炎への抗生物質の使用にあたっては「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し,投与の必要性を判断した上で,抗生物質の投与が適切と判断される場合に投与すること,また使用にあたっては耐性菌の発現などを防ぐため,原則として感受性を確認し,疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめることが記載されるようになりました。
 かぜの治療の基本は対症療法になります。発熱なら解熱鎮痛薬,せきなら鎮咳薬,鼻水なら抗ヒスタミン薬といった薬を服用することにより症状が抑えられ,体力の消耗を防ぎます。それにより,免疫力が高められ治癒に導かれます。そういった意味においても,かぜのときには安静にして,栄養価の高い食事をとることにより,免疫力を高めることが大切です。

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