内10:婦人科の薬
薬剤番号:内10-01-01~内10-02-04
■女性に特有の病気に用いる薬を説明します
◆更年期障害・不妊症・月経異常・子宮内膜症などの治療に用いる薬
◆避妊のために用いる低用量ピル(保険適応外です)
◆切迫流産を抑える薬,流産時の子宮出血に用いる薬,トリコモナス症の治療薬など
■副作用・相互作用に注意すべき薬
◆ホルモン剤
卵胞ホルモンは,血栓性静脈炎のある人は使わないようにします。また,閉経後の女性が卵胞ホルモンを長期間(約1年以上)使用した場合,子宮内膜がんを発生する確率が対照群より高く,その危険性の上昇は,使用期間や使用量に相関があることを示唆する疫学調査があります。子宮摘出をしていない女性の場合には,黄体ホルモンとの併用が望ましいとされています。さらに,グリベンクラミド・グリクラジド・アセトヘキサミドなどの経口糖尿病薬との併用で,血糖降下作用を弱めることがあるので注意が必要です。黄体ホルモンの場合は,肝機能検査値に注意をはらう必要があります。
低用量ピルは,卵胞ホルモンと黄体ホルモンを含んでいるので,血栓症や肝機能異常,糖尿病薬との併用などにも気をくばらなくてはいけません。長期にわたって服用することが多いので,血栓症(下肢の痛み・むくみ,突然の息切れ,胸痛,激しい頭痛など)には十分な警戒が必要です。
こうした血栓症の危険性は,年齢や喫煙本数が増すとそれにつれて増大するといわれています。35歳以上で,1日に15本以上のタバコを吸う人は使ってはいけません。また,子宮がんの発生の危険性もあるということなので,長期間使用する場合は6カ月ごとに検診を受け,1年に1回は子宮・卵巣を中心とした骨盤内臓器の検査,特に子宮頸部の細胞診を受けなければいけません。
■薬剤師の眼
低用量ピルも「医薬分業」すべき
更年期障害などに一時繁用されたガンマ-オリザノールも,最近ではあまり使用されなくなりました。英米独仏のいずれの国においても薬として認められていないので,これでよいと思われます。
低用量ピルを使っている女性はどれくらいいるのでしょうか?
発売している会社の売り上げから逆算して人数を割り出すことができるかもしれませんが,健康保険の適応になっていないので,公表されたデータはありません。医療機関が直接使用者に販売しているわけですが,このように注意事項がいろいろある薬だからこそ,職種がちがう複数の専門家が,それぞれの立場でアドバイスすべきだと思います。
欧米では,医師が直接患者にピルを売ることはありませんので,日本でもそうすべきではないでしょうか。もちろん「性」に対する考え方の違いなどもあって,プライバシーの保護ということになると複雑ではありますが,適正な使用や副作用情報の入手という観点のみで考えれば,ピルについてこそ「医薬分業」をすべきです。