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ポケットメディカ 処方薬事典
概要

内15:抗菌製剤と結核の薬
薬剤番号:内15-01-01〜内15-02-08

■感染症治療に用いる薬のうち,抗菌製剤・抗結核薬について説明します

〈抗菌製剤〉
◆抗菌製剤は,化学的に合成し開発された薬剤で,抗生物質と同様に微生物の発育や増殖を抑え,各種の細菌や真菌による感染症の治療に用います。
◆抗生物質と同様に化学構造により分類されていますが,今では抗菌力,有効菌種の広さなどから,一般にニューキノロン剤のことをさしていいます。そのほか,日和見(ひよりみ)感染症として現れる深在性真菌感染症に用いる内服の抗真菌薬などがあります。
〈抗結核薬〉
◆肺結核やその他の結核症の治療薬
◆ハンセン病や非結核性抗酸菌症に用いる薬

■副作用・相互作用に注意すべき薬

◆ニューキノロン剤
 ニューキノロン剤で最も注意すべき副作用は,けいれんです。単独で服用した場合にもおこりえますが,非ステロイド系解熱鎮痛薬(NSAID)との併用で,その危険性がさらに増大します。特に,エノキサシン水和物とフェンブフェン(現在はともに発売中止)の併用が危険といわれ,厚生労働省は1985年10月発行の『医薬品副作用情報No.81』と89年9月発行の『同情報No.98』,91年10月発行の『同情報No.110』において,警告を出しています。
 エノキサシン水和物以外のニューキノロン剤とフェンブフェン以外のNSAIDの併用においても,注意する必要があります。
 その他には,ショック・中毒性表皮壊死融解症(TEN)・皮膚粘膜眼症候群(スティブンス-ジョンソン症候群)・無顆粒球症・偽膜性大腸炎・間質性肺炎・急性腎不全や肝機能障害など,抗生物質と同じような副作用にも注意が必要です。抗生物質にはなくてニューキノロン剤にだけある副作用としては,横紋筋(おうもんきん)融解症・アキレス腱炎や腱断裂・過敏性血管炎などがあります。

◆抗結核薬
 抗結核薬の副作用として特異なものは,イソニアジドでの肝機能障害,エタンブトール塩酸塩での視神経障害による視力低下・中心暗点・視野狭窄・色神異常などがあります。これらの副作用は,同じ抗結核薬であるリファンピシンとの併用で強められます。リファンピシンは肝臓における薬物代謝酵素(CYP3A4など)誘導作用により,いろいろな薬剤の効果を減弱させるので注意が必要です。
 ところで,リファンピシンの相互作用を利用した特異な事件がありました。元ユーゴスラビア大統領のミロシェビッチ被告が関与した事件で,読売新聞(2006.3.16)によると,旧ユーゴ戦犯法廷の拘置施設に収容されていた同被告は,持病の高血圧治療のため,法廷の医療チームは降圧剤を与えていたのですが,血圧はいっこうに下がりませんでした。そこで被告の血液を検査したところ,結核やハンセン病の治療に使われるリファンピシンが検出されたのです。
 血液検査を行ったオランダ・フローニンゲン大学のドナルド・ユーヘス教授は次のように言っています。「リファンピシンは肝臓の機能を非常に活発にするため,体内にある他の薬品を短時間に破壊する。これをのまなかったら血圧は下がったはずである」。さらに,教授はこう続けます。「被告は健康状態を自ら悪化させ,家族のいるモスクワに渡り,ここに戻らずにすむように薬を摂取していたと解釈する」。
 この薬の特徴をよく表す逸話です。相互作用にはくれぐれも気をつけてください。

■薬剤師の眼
薬の危険性を未然に防ぐために「お薬手帳」の活用を
 本書の内容の多くが,副作用・相互作用・使用上の注意(妊婦,授乳婦,基礎疾患の有無により服用不可など)など,薬の有害について書かれています。薬を服用するうえで,やはり副作用などの危険性を避けては通れません。それを防ぐには,医師,歯科医師,薬剤師など投薬する側の努力だけでなく,服用する患者にも協力していただきたいと思います。そのためにも,お薬手帳を携帯し活用してください。
 お薬手帳は,使用する薬品名,用量・用法,使用上の注意点などが記載された薬局が提供する情報書類を貼ったり,自分でメモしたりします。患者本人だけではなく,その介護者も一緒に,処方された薬について把握し管理することができます。お薬手帳を受診の際,医師,歯科医師,薬剤師に提示することにより,薬の副作用,重複投与,相互作用を確認でき未然に薬の危険性を防ぐことにつながります。病院や薬局で薬をもらうたびに,お薬手帳に内容を記載してもらえます。
 お薬手帳は,受診する医療機関,薬局ごとに手帳を分けるのではなく,1冊にまとめることにより,服用歴,のみ合わせなど薬の管理がよりしやすくなります。また,患者自身が「お薬手帳」に積極的に書き込んで活用してください。例えば,服用した市販薬名,薬が変わったときの体調の変化,検査のデータ,質問や気になる点をメモしておくなど,ご自分ののんでいる薬・体調について関心をもち,記録として残してください。それが治療のうえにも役立つことでしょう。

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