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ポケットメディカ 処方薬事典
概要

内11:内分泌疾患の薬
薬剤番号:内11-01-01~内11-03-06

■性ホルモンを除くホルモンに関係する薬を説明します

◆いろいろな作用で高血糖を防ぐ経口糖尿病薬
◆甲状腺ホルモンが低下状態にある橋本病・クレチン症などに用いる甲状腺製剤
◆甲状腺ホルモンが過剰になっているバセドウ病(甲状腺機能亢進症)に用いる抗甲状腺製剤
◆長く血液透析を受けている人に見られる副甲状腺機能亢進症に用いる薬
◆下垂体ホルモンに関係する末端肥大症などに用いる薬
*自己注射薬のインスリン製剤については,「在宅で管理する注射薬」の糖尿病治療薬(1)(インスリン製剤)糖尿病治療薬(1)(インスリン製剤)をご覧ください。

■副作用・相互作用に注意すべき薬

経口糖尿病薬
 スルフォニルウレア系・ビグアナイド系の糖尿病薬は,使い方や副作用のデータも蓄積されており,割合安心して服用することができます。共通して注意する副作用は,薬が効きすぎるための低血糖症です。初期症状は,脱力感・高度の空腹感・発汗・動悸・ふるえ・頭痛・知覚異常・不安・興奮・神経過敏・集中力低下・精神障害・意識障害・けいれんなどです。このような変化を感じたら,ただちに5〜10gのブドウ糖(砂糖なら10〜20g)が入った吸収のよいジュースやキャンディをとってください。
 なお,スルフォニルウレア系の場合には,再生不良性貧血・溶血性貧血・無顆粒球症がおこることがあるので,原因不明の発熱・皮膚や粘膜の出血・のどの痛み・ひどい疲れを感じたら,そのことを処方医に伝えてください。ビグアナイド系の場合は乳酸アシドーシスにも注意が必要です。悪心・嘔吐・腹痛・下痢・倦怠感・筋肉痛・過呼吸・生あくびなどの症状に気づいたら,すぐに医療機関と連絡をとってください。
 食後過血糖改善薬では,低血糖症状のほかに腸閉塞症状や肝機能障害,劇症肝炎の発生にも注意が必要です。インスリン抵抗性改善薬も劇症肝炎に注意が必要です。悪心・嘔吐・全身倦怠感・食欲不振・黄疸などが現れたら,ただちに服用を中止しなければなりません。
 DPP-4阻害薬は,単独で使用する場合は低血糖のリスクは少ないとされていますが,他の血糖降下薬と併用する場合は注意が必要です。SGLT2阻害薬では,単独で使用する場合,低血糖のリスクはほとんどありませんが,他の血糖降下薬と併用する場合はやはり注意が必要です。また糖分を尿を介して排泄するため,尿に糖が多い状態が続き,尿路感染症のリスクが高くなります。年配の方では,頻回にトイレに行くのを避けるため水分を控える傾向がありますが,SGLT2阻害薬の副作用リスクを何倍にもする行為です。意識的に水分を多めに取って,どんどん排尿する必要があります。このことは脱水リスクの予防にもなりますので心がけてください。

■薬剤師の眼
経口糖尿病薬の第一選択はどう変わるのか
 この数年で経口糖尿病治療薬にはDPP-4阻害薬,SGLT2阻害薬が加わり,選択の幅が広がり,処方される薬も変化してきています。
 欧米では第一選択薬のメトホルミンは,わが国でも処方される人が増えていますが,スタンダードとはなっていません。メトホルミンが再評価されて処方が増えだした時期にDPP-4阻害薬が大々的に発売されたためでしょうか? DPP-4阻害薬14種類(配合剤を含む)の合計出荷額が約2,300億円に対し,メトグルコ(メトホルミンの先発薬)の出荷額は95億円です(2022年推計,『薬事ハンドブック2023年版』より)。
 メトホルミンは先発薬も後発薬も薬価は1錠10円前後(平均的な使用量の1日薬価として30〜60円),それに対してDPP-4阻害薬は平均的に1日薬価150円前後です。製薬メーカーが特許期間が残っている新薬であるDPP-4阻害薬を売り込むことは当たり前ですが,治療指針となるガイドラインを作る立場の専門医たちには,製薬メーカーの影響を受けない医療経済を含めた総合的な判断をしてもらいたいと思います。
 さて,一番新しく加わったSGLT2阻害薬は,今までの糖尿病薬とはメカニズムが異なります。腎臓の近位尿細管では原尿から体に必要な栄養素(ブドウ糖も含む)を再吸収して取り除き,老廃物と余分な水分を尿として排泄しますが,SGLT2阻害薬はこのうちのブドウ糖の再吸収を抑えて尿の中にブドウ糖を排泄します。作用の仕方が異なるので,副作用も脱水や尿路感染症など他の経口糖尿病薬ではあまり考えなくてもよかった事象がおこります。また,脱水による死亡例も報告されたためか,医師の間では積極的に処方されているとはいえない状況です。
 そんななか,2015年秋に発表されたエンパグリフロジン(ジャディアンス)の臨床試験の結果で,心筋梗塞・脳卒中やそれらを含めた全死亡が有意に減少することが示されました。DPP-4阻害薬の臨床試験では期待されていたものの減少が示されていなかったので,現在行われている他のSGLT2阻害薬の臨床試験の結果次第で,欧米での第一選択薬は変わるであろうといわれています。日本ではどうでしょうか。

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